◎ 署名活動報告(2015年10月)
2015年10月25日で、4459筆集まりました。
2015年10月26日、京都府・京都市それぞれにこの数を伝え、
両当局に配分して署名を提出いたしました。
合わせて、具体的に施策を進めるべく面談の場を開きました。
京都府・京都市に有効なヘイトスピーチ対策の推進を求める要望書
昨今、日本各地で「ヘイトスピーチ」などとよばれる人種差別行為が繰り返されています。なかには、刑法上の犯罪となる「ヘイトクライム」にまでエスカレートするものもあります。2009 年12 月に京都で引き起こされてしまった朝鮮学校への排外主義団体による
襲撃は、まさにヘイトクライムというべき事件でした。その後、この事件は、民事裁判の場で人種差別と認定されました。この画期的な判決は、日本中の被害者や心ある人々を勇気づけ、また国外でも広く報じられました。しかしながらこの判決は、被害当事者や関係者が、事件から5 年もかけて苦難の末にようやく勝ち得たものです。しかも事件後も、排外主義団体などによる人種差別行為が繰り返され、今もなお多くの被害者が声も上げられずにいます。ヘイトスピーチは、名指された当事者を長年にわたって苦しめる暴力であり、平等を目指す憲法の理念に反する社会的な害悪です。にもかかわらず、日本では人種差別被害の実態すら把握されておらず、行政・司法・立法のどの面からしても、その対策は不十分です。その背景には、外国籍住民や民族的マイノリティに対する制度的、社会的、文化的な差別が横たわっています。
このような状況において、まず日本政府が積極的な対策を早急に講ずるべきであることは言うまでもありません。しかしながら、さまざまな出身の住民を多数抱える地方自治体にもまた、地域に根ざした有効な対策を率先して講ずる責務があります。とりわけ朝鮮学校への襲撃事件を発生させてしまった京都、人種差別に対抗する市民の力が結集された裁判支援運動の中心ともなった京都には、特別な責務が課されています。
そこで私たちは、京都府・京都市に対して、ヘイトスピーチなどの人種差別をなくすための有効な対策を、以下のように求めます。
1) 京都府・京都市が協調して、市民との対話を重ねながら、「有効なヘイトスピーチ対策」を推進するための体制を構築してください。
2) ヘイトスピーチ被害は既に発生し、被害者は今も苦しんでいます。早急に被害実態の調査をおこない、被害者の救済・支援策を講じてください。
3) 「ヘイトスピーチを許さない京都宣言」(仮称)などを強く発信してください。
4) 「ヘイトスピーチを許さない条例」(仮称)などを制定し、京都府・市行政はもとより、住民・地域社会・公的機関それぞれが、ともにヘイトスピーチを許さない京都を目指して取り組む、総合的な施策を確立してください。
5) 外国籍住民に対する制度的・社会的・文化的差別を是正するための対策に取り組んでください。
【用語の解説】日本が批准している人種差別撤廃条約は、人種差別を、「人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身に基づくあらゆる区別、排除、制限又は優先であって、政治的、経済的、社会的、文化的その他のあらゆる公的生活の分野における平等の立場での人権及び基本的自由を認識し、享有し又は行使することを妨げ又は害する目的又は効果を有するもの」と定義しています。さまざまな形態の人種差別のなかでも、こうした目的・効果を持つ表現行為を「ヘイトスピーチ」と呼びますが、このなかには現行の刑法上の犯罪行為にまで至り、警察捜査や訴追対象とされるような「ヘイトクライム」となるものもあります。ただし、「ヘイトスピーチ」という用語がより一般に知られていることもあり、この運動では、総称として「ヘイトスピーチ」という言葉を用います。
京都朝鮮初級学校の襲撃事件は、刑事裁判でも加害者側の有罪判決が確定しており、その意味でヘイトクライムに属します。残念ながら刑事裁判では人種差別という論点が考慮に入れられませんでしたが、民事裁判判決(2014年12月確定)ではその問題が正面から扱われました。
◎ 要望書提出(2016年4月)
京都で在日朝鮮人の民族教育が開始されて70年を迎える年を機に、
京都府・京都市それぞれに、民族教育支援の継続と充実を求める要望書を提出いたしました。
朝鮮学校支援の継続と充実を求める要望書 2016年4月26日
京都府知事 山田啓二様
京都市長 門川大作様
本年は京都の地で在日朝鮮人の民族教育が開始されて70年を迎える記念すべき年です。京都府は1953年に全国で初めて朝鮮学校を各種学校認可した自治体(地域)であり、(京都市は)79年(82年)以降、民族学校に対する補助金を支出してその教育を支えてきました。
ところが、文部科学大臣3月29日通知「朝鮮学校に係る補助金交付に関する留意点について」を受け、茨城県知事のように今年度の補助金交付をためらう発言が報道されるなど、助成事業の継続をめぐって一部、混乱が広がっています。これは、地方行政に対する文科省の不当な干渉行為であり、私たちは政府に強く抗議しています。
09年の京都朝鮮第一初級学校に対する「ヘイトスピーチ」事件の判決では、朝鮮学校を「民族教育を軸に据えた学校教育を実施する場として社会的評価が形成されている」学校と認めました。そして、「我が国で在日朝鮮人の民族教育を行う社会環境」が法的保護の対象となるとし、「在日朝鮮人の民族教育を行う利益を有する」学校であるとしています(14年12月最高裁決定により確定)。
高額賠償を命じた判断の前提には京都において民族教育事業が果たしてきた社会的重要性に対する高い評価があり、これは民族教育の保障が「日本社会にとっての利益」でもあることを示唆しています。判決は、多民族教育・多文化教育を掲げ、住民の相互理解を深める環境を涵養し、教育の機会均等の保障をめざしてきた京都府(市)の施策の重要性・正当性を裏付けるもので、私たちも京都府(市)行政の先見性に改めて敬意を表するものです。
他方、府(市)内ではいまだ「ヘイトデモ」が繰り返されています。上記判決が、事件から数年を経過した今日においてもなお「被害が拡散、再生産される可能性がある」ことに触れ、精神的な「苦痛の緩和のために多くの努力を払わなければならない」状態が継続していることを認めているように、民族教育をおこなう環境は損なわれつづけているのです。
さらに、判決は人種差別の法的評価にあたり人種差別撤廃条約(日本は1995年に加入)の趣旨を重視せねばならないと明示しています。同条約の解釈指針を示す国連人種差別撤廃委員会は、14年8月の最終見解において、公人や政治家の発言がヘイトスピーチを扇動している点に懸念を表明し、地方自治体の朝鮮学校に対する助成事業の再開ならびに維持を奨励しています。
地方自治体の責任と判断のもと、適正な管理のもとで実績が積み重ねられてきた施策に対して疑義を投げかける国の姿勢に批判の声が強まることは必至です。既に東京、大阪の各単位弁護士会は会長声明を発してその違法の疑いを指摘し抗議の意思を表明しています。
京都府(市)におかれましては、地方自治の本旨に基づき、住民の教育振興のため、文科省通知に左右されることなく、民族教育に対する助成事業を継続してください。また、地方行政として、判決の趣旨を引き受け、国連人種差別撤廃委員会勧告に応え、朝鮮学校に対する補助金の充実をめざしてください。特に、09年の事件の精神的苦痛の緩和のために、自治体として適切な措置を講じられるよう要望します。
◎ 要請文提出(2020年5月)
新型コロナウイルス感染症が広がるなか、
京都府が報道発表している患者情報の属性に「日本国籍者」「外国籍者」の区別があったため、
不要な情報開示の停止を求める要請文を提出して、是正をお願いしました。
その後、京都府の担当部署と人権部局等とが連携して対応にあたり、是正されています。