NEW! 2021年度 大学のレイシャル・ハラスメント対策に関する実態調査報告書
(2022年3月30日公表)
京都の大学におけるレイシャル・ハラスメント対策の実態調査(2021年8月現在、調査実施中)
【概要】
京都市内に本部を置く国公私立大学(一部、市外を含む)30大学を対象に、レイシャル・ハラスメント(人種・民族・国籍・出身国等にもとづくハラスメント)の対策にどれほど積極的に取り組んでいるかを照会する調査を実施しています。調査票は2021年7月29日に送付し、回答期限は8月31日と設定しています。調査結果は9~10月に中間報告として公開し、2022年3月までに報告書としてまとめます。
【実施主体】
龍谷大学犯罪学研究センター ヘイト・クライムユニット
京都府・京都市に有効なヘイトスピーチ対策の推進を求める会
【調査対象】
(国立)京都大学、京都工芸繊維大学、京都教育大学
(公立)京都市立芸術大学、京都府立医科大学、京都府立大学
(私立)大谷大学、京都外国語大、京都華頂大学、京都看護大学、京都芸術大学、京都光華女子大学、京都産業大学、京都情報大学院大学、京都女子大学、京都精華大学、京都先端科学大学、京都橘大学、京都ノートルダム女子大学、京都美術工芸大学、京都文教大学(市外)、京都薬科大学、嵯峨美術大学、種智院大学、同志社大学、花園大学、佛教大学、平安女学院大学、立命館大学、龍谷大学
【調査票】
ウェブ回答と書類郵送
【調査趣旨(調査要項より抜粋)】
日本では、男女雇用機会均等法の改正(1999年)をきっかけに、職場におけるセクシャル・ハラスメントの防止措置を講じることが事業主に対して義務づけられました。その後、2019年にはマタニティ・ハラスメント、2020年にはパワー・ハラスメントに対する防止対策が法的に義務づけられることになりました。また、2013年に制定され2016年に施行された障害者差別解消法により、障害のある人に対する不当な差別的取扱いが禁止されることになりました。
それに対して、人種・民族・国籍の異なる人々に対するハラスメントや差別的取扱いについては、日本が1995年に人種差別撤廃条約(1965年国連総会採択)に加入したにもかかわらず、これを禁止したり防止対策を義務づけたりする法律は制定されませんでした。2016年にヘイトスピーチ解消法(2016年)が公布・施行されましたが、義務や罰則を定めているものではない理念法にとどまるのみならず、その適用対象も極めて狭いものとなっているのが実情です。
こうした法的な枠組のなかで、各大学はその特性に応じたハラスメント防止措置を講じてきました。大学は、教職員にとっては職場であると同時に、そこで教職員と学生が関係を結ぶ場でもあります。そうした環境のなかで、残念ながら教職員のあいだ、教職員と学生とのあいだ、学生のあいだにハラスメントが生ずることが多々ありました。教職員と学生のあいだには雇用関係が存在していないため、上記の全ての法令で対策が義務づけられているわけではありません。しかしながら、法的な枠組ができあがる以前から、「キャンパス・セクハラ」が問題化されてきたこともあって、セクシャル・ハラスメントのみならず、アカデミック・ハラスメント、キャンパス・ハラスメントといった概念のもとで、各大学がハラスメント対策を講じてきた経緯があります。
大学は多様な人々が集う場です。在日外国人のみならず、海外から留学生が数多く集っています。特に2008年に日本政府が発表した「留学生30万人計画」をきっかけに、リーマンショックや東日本大震災の余波がおさまった頃から留学生が激増しました。2013年には135,519人だった留学生は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行する前の2019年には312,214人(うち高等教育機関の在籍者は228,403人)まで急増しました(JASSO調べ)。
「大学のまち京都・学生のまち京都」を謳う京都市では、大学・大学院の在籍学生数144,713人(2019年、京都市人口の9.9%)のうち、外国人学生は10,139人(学部5,394人、大学院4,745人)、学生の7.0%を占めています。学生の14人に1人は外国人学生です。
一方、日本の近隣諸国(中国、韓国、ロシア)に対する「親しみを感じない」人々の割合は、遺憾なことに近年高まっています(内閣府「外交に関する世論調査」)。京都市の大学・大学院で、現在(2019年度基準)も留学生のうちで最も多い国籍が中国(学部2,001人、大学院2,288人)、その次が韓国(学部1,026人、大学院276人)であることからしても、そうした外国に対する世論が在日外国人に対して投影される危険性が高まっています。COVID-19の影響で、留学生数は大きく減少していますが、その一方で外国人および外国からの入国者に対する敵愾心は明らかに高まっています。
そうした状況で、国籍・出身国・人種・民族の違いにもとづくハラスメントの事例が各大学から聞こえてくるようになっています。しかし体系的に調べられ、報告されているものがないため、その実態は未解明です。ただし、そうした経験を踏まえながら、各大学で国籍・出身国・人種・民族の違いにもとづくハラスメント、すなわち「レイシャル・ハラスメント」と総称し得るものに対する防止措置が徐々に講じられるようになってきています。といっても、その歩みは一様ではありませんし、スタンダードといえるものが構築されているわけでもありません。
そこで私たちは、望ましいレイシャル・ハラスメント対策のあり方を探り、大学に対策を促進することを目的に、各大学のレイシャル・ハラスメント対策の実態を調べ、公表しようと計画しました。
以上の趣旨をご理解のうえ、ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。